2013年9月13日金曜日

江戸~明治のペーパークラフト 立版古情報

ご無沙汰してすみません。久々の記事の更新です。

今回は江戸時代から明治にかけて流行したペーパークラフト、立版古についての記事です。立版古というものがどういうものかは文字で説明するより写真を見たほうがいいと思うので、以下をご覧ください。


こんなのが


新板切組御神輿ノ図

こんなんなります。


新板切組御神輿ノ図を組み立てた状態

普通はもっと大きいジオラマのようなものが多いみたいです。


児雷也物語之内新潟浜辺之場(兵庫県立歴史博物館の会場で撮影)

立版古は、いわゆる錦絵の一分野である「おもちゃ絵」の一種で、紙に印刷したものを切ったり貼ったりして遊びます。組み立てると、3次元とも2次元ともつかない「2.5次元」(特別展「江戸時代のペーパークラフト」での表現。)という、なんだか不思議な次元の世界ができあがります。

現在は全国的に「立版古」という名前が主流になっているようですが、どちらかというと上方での呼称だったとか。そのほかでは、もともとは中に火を入れて燈籠のようにしていたところから、「組上燈籠」あるいは「切組燈籠」と言われていたそうです。

自分は長らくその存在を知らなかったのですが、ほんの1年くらい前からこの立版古なるものに興味を持ち始めました。その後、ほうぼうのデジタルアーカイブで漁ってみたり、あるいはYahoo!オークションや日本の古本屋で探してみたり、ちょこちょこと遊んでいます。で、このたび、そこそこ情報がたまってきたのでこういう場所にでも乗っけてみようかな、と思った次第です。

以下では、いろいろなデジタルアーカイブで見つけた画像へのリンク、画像はなかったけど所蔵は確認できたもの、それから関連するイベント情報や資料についてもちょびっとだけつけておきました。ほとんどの方はあまり興味ないかもしれませんが、ちょっとでもおもしろそうだと思ったら覗いてみてくださいませ。



1. デジタル画像


筑波大学附属図書館

※@ketom24さん、情報提供をありがとうございました!


Museum of Fine Arts, Boston

  • 新板ホコ出シ組上リ (芳藤)
    [1]

石川県立美術館

  • 組上ヶ浜松御城の図 (歌川芳藤)
    [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7][8]
  • 郵便箱組上ケ (記載なし)
    [1]

関西大学図書館

  • 極新板切組とうろう大坂合戰之圖 (二代目貞信)
    [1] [2]
  • しん板切くみ燈篭冨士之裾野牧狩之圖 (二代目貞信)
    [1]
  • 極しん板切組とうろう近江源氏八ッ目 (二代目貞信)
    [1] [2]
  • 極々大新板忠しん蔵七段目切くみとうろう (二代目貞信)
    [1]
  • 大新はん切くみ道行隅田川 (二代目貞信)
    [1]
  • 大新板ふた蝶々米や塲のたん組立繪 (二代目貞信)
    [1]
  • 大新板伊賀越道中双六傳授場組上ケとうろう (二代目貞信)
    [1]
  • 大しんぱん安宅ノ関 (二代目貞信)
    [1]
  • 極しん板切組とうろう芝居役者部屋のず (二代目貞信)
    [1]
  • 大新板芝居大仕かけ (二代目貞信)
    [1]
  • 大しん板切組とうろう里見八犬傳悪の段猫たいじ (二代目貞信)
    [1]
  • 極新板切くみとうろう太功記十段目 (二代目貞信)
    [1]
  • 極新板切組とうろうあしや道満大内鏡狂らんの段 (二代目貞信)
    [1]
  • 大新板曽我物語對面場ノ段切組とうろう (二代目貞信)
    [1]
  • 極大しんぱん切組大さか中の嶋浪花□大がらくりの図 (二代目貞信)
    [1]
  • [二代長谷川貞信版画切組灯篭] (二代目貞信)
    [1]

国立国会図書館

  • 八百善組立絵 (国長<歌川国長>//画)
    [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]
  • 西南戦争一覧・しん板西南戦争一覧・新板西南戦争一覧 (しん斎)
    [1] [2] [3]

国立歴史民俗博物館

  • 日清戦争平壌玄武門組上ヶ五枚続 (歌川国政)
    [1] [2] [3] [4] [5]
  • 新工風四ッ谷怪談丁ちんぬけ (不詳)
    [1]
  • 組上燈篭かざり附品 大日本帝国万々歳 (永島春暁)
    [1]
  • 新板組上ぶぞくそでもの 陸海軍大勝利 (永島春暁)
    [1]
  • 〈組上絵 鞍馬山〉 (歌川国利)
    [1]
  • 義士夜討の組上 (不詳)
    [1]
  • 佐倉宗吾雪中の組立 (不詳)
    [1]
  • 明烏雪責の組上 (不詳)
    [1]
  • 新板伏見雪中組上 (不詳)
    [1]
  • 〈明治座新狂言 秋山忠死之場組上〉秋山忠死ノ場 三枚つゞき (豊原国周、盛元)
    [1] [2] [3]
  • ふしみときわ組上ケ、忠臣蔵組上ケ、宗五郎組上ケ、水湖伝組上ケ (不詳)
    [1]
  • 組上つけたし雪の図 (永島春暁)
    [1]
  • 和漢名将組上の内 漢 三国志の図 (不詳)
    [1] [2] [3]
  • 文学荒行の組上 (不詳)
    [1]
  • 祇園家座り付 (歌川芳藤)
    [1]
  • 児雷也物語之内新潟浜辺之場 (歌川国貞3(歌川国政4))
    [1] [2] [3] [4]
  • しん作大うつしゑ 四ッ谷怪談 (永島春暁)
    [1]
  • 二十四孝狐火の景 (歌川芳藤)
    [1-2]
  • 忠臣蔵四段目城渡シ組上三枚続[牧金版] (記載なし)
    [1-3]
  • 新板組上ふぞくそで物 帝国万々歳 (永島春暁)
    [1]
  • 第三回内国勧業博覧会組上ケ (歌川国利)
    [1] [2] [3]
  • 義士両国橋引上組上五牧(ママ)つゝき[牧金版] (記載なし)
    [1-5]
  • 錦絵「新工夫四ツ谷怪談丁ちんぬけ(組上絵)」 (記載なし)
    [1]

早稲田大学坪内博士記念 演劇博物館

  • 大阪御陣雪中大合戦組上五枚続 (記載なし)
    [1]
  • 国性爺紅流組上ノ図 (よし藤)
    [1] [2]
  • 忠臣蔵七段目一力茶屋場組上三枚つゞき 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3]
  • 赤穂四十七義士吉良家討入の図組上五枚つゞき 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3] [4] [5]
  • 忠臣蔵四段目城渡シ組上三枚続 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3]
  • 忠臣蔵三段目殿中刃傷の場組上四枚続 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3] [4]
  • 義士両国橋引上組上五枚つゞき 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3]
  • 忠臣蔵四段目城渡シ組上三枚続 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3]
  • 忠臣蔵三段目殿中刃傷の場組上四枚続 東京浅草 牧金版 (豊国)
    [1] [2] [3] [4]
  • 赤穂四十七義士吉良家討入の図組上五枚つゞき 東京浅草 牧金版 (記載なし)
    [1] [2] [3]
  • 花燈籠楽屋組上 (梅堂 )
    [1] [2]
  • 劇場楽屋組上 (梅堂 )
    [1]

立命館大学アート・リサーチセンター

  • 「極新板忠臣蔵 五だんめ 組上ケ灯らう」 (無款)
    [1]
  • 「大経師昔暦 切くみとうろう」 (長秀)
    [1]
  • 「極新はん切組とふろう 四ツ谷怪談六枚続」 (貞信<1>)
    [1] [2] [3] [4] [5] [6]
  • 「忠臣蔵七段目 五枚つゝき」 (記載なし)
    [1] [2] [3] [4] [5]
  • 「大新板 宝船 組上」 (記載なし)
    [1]
  • 「祇園家座り付」 (芳藤)
    [1] [2] [3]
  • 「近江八景」 (貞信<2>)
    [1] [2] [3]
  • 「まわりとうろう」 (貞信<2>)
    [1]
  • 「大新板安宅新関切組燈籠弐枚続キ之内」 (記載なし)
    [1] [2]
  • 「大江山鬼人退治之図」 (記載なし)
    [1] [2]
  • 「極しん板切組とうろふ 頼政ぬゑ退治の図」 (記載なし)
    [1] [2] [3]
  • 「記載なし」 (記載なし)
    [1] [2] [3]
  • 「新板船の組上げ」 (記載なし)
    [1] [2]
  • 「里見八犬伝の内 対牛楼の場 組上ゲ五枚続」 (記載なし)
    [1] [2] [3] [4] [5]
  • 「白浪五人男鎌倉極楽寺山門之場組上ゲ五枚続」 (記載なし)
    [1] [2] [3] [4] [5]
  • 「秀郷蜈蚣ヲ射ル図」 (記載なし)
    [1] [2] [3]
  • 「東京座新狂言国性爺紅流シ組上ゲ五枚続」 (記載なし)
    [1] [2] [3] [4] [5]


2. 所蔵情報


国際日本文化研究センター


静岡県立図書館


兵庫県立歴史博物館


公益財団法人松竹大谷図書館


大阪府立大型児童館ビッグバン


大阪府立中之島図書館



3. 展示・イベント情報


大阪府立中之島図書館


竹ノ輪


大阪府立大型児童館ビッグバン


兵庫県立人と自然の博物館


兵庫県立歴史博物館


静岡市東海道広重美術館


アーツ千代田 3331


コクヨ エコライブオフィス品川



関連文献


で、こっからどうでもいい話です(^^;)

今回の情報を集めるにあたって、色々なデータベースやデジタルアーカイブにお世話になりました。立版古のようなものにこうやってアクセスできるのは本当にありがたいのですが、ありがたいのですが、いかんせん探しにくい。個別のページに行っていろんなキーワードでたたいてと、結構大変でした。

おそらく、デジタルアーカイブに取り組む図書館さんなどでも、現在はとにかく「産めよ増やせよ」ということで、その後にまで意識がいっていない、という事なんだとは思います。が、もうちょっと使う側からの探しやすさをなんとかできないもんか、と思いました。

国立国会図書館のデジタルアーカイブポータルがなくなって以来、その志を継ぐような取り組みがあまり見られないのは残念に思います。形式的には継承してる国立国会図書館サーチさんには頑張っていただきたいところです。個人的にはよく使う神戸大学さんの新聞記事文庫や早稲田大学さんの古典籍総合データベースなんかとの連携がちゃんとできてくれるととてもうれしいなあと勝手に念じています。…。

結局、今回のあれこれに当たっては外国の方が作ってはる浮世絵検索CA-R 浮世絵愛好家のコンピュータプログラマが作った“浮世絵検索”が公開)が一番役に立ったってのは何とも皮肉な気もしますが、日本らしいっちゃあそうなのかもなぁ、とか思いました。公立機関の歩みが遅くって、カーリルみたいな民間の有志の方のがぱっと出てくる、みたいな展開になったりするんでしょうか。はてさて。

2013年5月13日月曜日

昔の博士の情報をテキスト化してみよう計画

1.はじめに


日本の学位論文を包括的に収録した台帳は存在せず、したがって検索もできなければどれくらいの数があるのかも不明、なんて話をTwitter(下記参照)でしていたのをきっかけとしてこのエントリを書いてみました。


タイトルはアレですが、要は古い博士録を手打ちでテキスト入力して、NDL-OPACやNIIのデータベースで探せない分を補完してみようという計画です。

某大きな根っこさんの情報によると、国立国会図書館に収蔵されていない年代≒大正12年以前の博士というのはせいぜい3000人程度らしいので、それなら近代デジタルライブラリーなどの画像を見ながら人力でテキストデータを作ってしまえるんじゃないのか、という話の流れです。


2.方法


(1)Googledocなどクラウド上にシートを用意
(2)底本になりそうなものや使えそうな情報源を紹介
(3)協力者を募集
(4)自分もやりながらみんなが打ち込んでくれるのを待つ

いたってシンプルです。基本的に、こちらで用意するのは底本(というほど厳密なものではないが)と打ち込み先だけです。後はほかの方々と一緒にひたすら打ち込みます。打ち込みます。

・みんなであれこれするファイル
 (たぶん完成まで未公開。お手伝いしてくれる方はメール@yaskohiまでご連絡を。)

学位大系博士録. 昭和14年版
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1461730

・・・・とはいっても、なかなかそれだけではつらいと思うので、方針のようなものをいくつか書いておきますね。


異体字
あまり気にしなくて良いです。要するに検索ができればいいので、Google検索とか、OPACとか異体字を吸収してくれるシステムを通して吸収される程度なら何でもアリです。

字がつぶれて読めない情報
Googleなり、冊子体の情報なりを使って補完してください。補完できないものは放置して助けを待ちます。

付加的な情報
シート内「ページURL」には記載があった箇所のURL(資料のURL+/コマ数)を、「論文URL」にはウェブで上で公開されているものがあればそのURLを入れてください。

作業の範囲
NDL-OPAC学術研究データベース・リポジトリ 博士論文書誌データベースにない情報を補完するのが目的ですので、それらに情報が含まれるような年代まで入力したら作業終了です。ちなみに、NDL-OPAC収録の大正12年以前のもの/収録博士数を数えると以下のような数字が出ました。


大体2500人というとこでしょうか。とはいえ、大正13年などのものでもNDL-OPACには収録していないものもあるようなので、もう少し多めに調査をする必要があるかもしれません。そこのところはまたやりながらの検討ということになるのかと思います。

一人あたりの作業量
もともと一人でもやろうかと思っていた作業なので、好きな人が好きなだけ手伝っていただければよいかな、と。なかなか大変で終わらなかったらやれる人がやっちゃえばいいと思いますし。作業の分担については、とりあえず医学以外は学位の種類ごとに分けて、医学は番号を100くらいずつ割り振って(終わったら次の100を割り振る)やっちゃおうかと思います。

あと、終わったら自由利用ということでここで公開しようと思いますので、そこに賛同いただける方お願いします。



3.情報源等


最後に、参考になりそうな情報を掲載しておきます。文字がつぶれて読めない時など適当にご利用くださいませ。

(1)大学をまたいだ情報源

・学術研究データベース・リポジトリ 博士論文書誌データベース(国立情報学研究所)
 http://dbr.nii.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000016GAKUI1

・JAIRO (国立情報学研究所)
 http://jairo.nii.ac.jp/

・CiNii Books (国立情報学研究所)
 http://ci.nii.ac.jp/books/

・CiNii Articles (国立情報学研究所)
 http://ci.nii.ac.jp/

・国立国会図書館サーチ (国立国会図書館)
 http://iss.ndl.go.jp/

・NDL-OPAC (国立国会図書館)
 https://ndlopac.ndl.go.jp/

・国立国会図書館デジタル化資料 (国立国会図書館)
 http://dl.ndl.go.jp/

(2)大学ごとの情報源

大学の図書館などで公開されているデータベースをざっくり調べてみました。今回の調査と年代がかぶりそうなものを集めてみましたが、漏れがある場合は教えていただけると幸いです。

・日本で受理された学位論文を探す(名古屋大学附属図書館)
 http://www.gsid.nagoya-u.ac.jp/service/library/guide/dis.html

・京都大学博士学位論文データベース(旧制時代~)
 http://www.kulib.kyoto-u.ac.jp/modules/search/index.php?content_id=16

・九州大学学位論文書誌データベース(1922=大正11年~)
 http://mars.lib.kyushu-u.ac.jp/infolib/meta_pub/G0000002GAKUISYOSI

・北海道大学学位論文目録データベース(1922年=大正11年~)
 http://www.lib.hokudai.ac.jp/dissertations/

・新潟大学博士論文データベース(1923=大正12年~)
 http://www.lib.niigata-u.ac.jp/Hakase/hakaseDBtop.html

4.応募方法

 以上です。繰り返しになりますが、興味のある方はメール@yaskohiまでにメールアドレスをお知らせください。 とりあえず、5月14日を〆として、週末までに具体的なことについてメールでご連絡させていただきます。


2013年5月12日日曜日

著作権情報センターの「権利者を捜しています」掲載広告などをツイートする @kenrisha_search を作ってみた

最近いろいろ記事を書き溜めているのですが、なかなか最後まで書き上げたもので出てこず便秘状態です。で、代わりと言っちゃなんですが某記事を見て、久々にbotを作ってみました。




一時期流行したRSS×Twitterのbotということで試み自体に面白味はないのですが、つぶやく中身は知られていないわりになかなか面白いものなんじゃないかな、と思います。

で、その情報源は何かというと、一つは公益社団法人著作権情報センター CRIC内にある「権利者を捜しています。」というページ。ここは「著作物等を利用したいが、権利者(著作権者・著作隣接権者)が不明等により、権利者に連絡することができない方のための「権利者捜し」の広告ページ」で、いろいろな事業者による広告が(一定期間)掲載されています。


・権利者を捜しています。(公益社団法人著作権情報センター)
 http://www.cric.or.jp/c_search/c_search.html


それから、2つ目に下記のようなサイトもあったのでこちらも入れておきました。こちらは前述のものと重複している案件もあるようですが、裁定云々の話とは直接関係はないようでです。


・著作権者を捜しています | 日本著作権教育研究会


ほかにもそういうサイトがあったら随時入れていこうかな、と考えています。ではでは。

2013年2月22日金曜日

デジタルアーカイブの利用あれこれ

2013年2月22日に京都大学でお話しした内容をもとに記事を書いてみました。一部、わかりやすいように書き改めたところもありますが基本的には同じ内容です。Twitterのまとめや発表の詳細については下記をご覧いただければ。






1. はじめに

(1)自己紹介

  • 大学ではメキシコの言語・文化のあれこれを学ぶ。
  • 図書館で働いて4年目。ほぼ電子図書館関係のお仕事。


(2)考えていたこと

いろいろなデータベース・デジタルアーカイブを見聞きして:

  • ウェブサイトでの説明が不明瞭。運営者の理念、熱意のみ言及など。何が収録してあって、何のために運営しているか、どういうデータの使い方があるかなどの言及が乏しい。
  • 立ち枯れデータベース。Not foundやシステムが動かないものを散見。
  • 利用した成果や事例が見えにくく、存在価値がわかりにくい。
→データベース/デジタルアーカイブはどれだけ使われているのか?

イベント・展示の仕事の中で:

  • 運営のうえで、デジタルデータを活用できないかと頭をひねる。
  • 自分の活動に生かすためよそでの事例について情報を収集。
→どのように使われているのか?使うことができるのか?


2. デジタルアーカイブ概況

(1)既存の調査結果から

「文化・学術機関におけるデジタルアーカイブ等の運営に関する調査研究」

  • 目的:国内の文化・学術機関のデジタルアーカイブの整備・運営状況に関する基礎データを整備すること。
  • 1次調査は実施規模の調査。各種図書館、公文書館、博物館など計4,302機関を対象とし、2,076機関が回答。
  • 2次調査は実施実態の調査。1次調査の結果をもとに560機関を対象とし、431機関が回答。


② 概数的なこと(1次調査から)

  • 全体の実施率は27%(553/2076機関)
  • 機関の種類と規模による差が大きい。
  • 公開年は2000年代以降が80%で館種により差。
  • 公共・大学図書館は2006年以降が多い。


③ 「利用」に関して(公共図書館・大学図書館の結果@2次調査)

  • 複数の選択項目の中から1~3番目に重要なものひとつづつ、計3つ選択。
  • 1番目:「活動成果の普及・公開」や「収蔵品・資料の継続的保存・管理」など
  • 2番目:「データベース構築による資料の検索性の向上」や「広報活動の一環」など
  • 3番目:「新しい表現による情報提供」や「(二次利用のための)館外貸出・提供」など
  • そのほかは「(企画展等のための)短期的な展示」「自機関職員等の調査研究の資料として」「収蔵・資料スペースの縮小・効率化」など。


④ 概況まとめ

  • 公共・大学図書館ともに2000年代後半からのデジタルアーカイブ普及段階
  • 資料の公開・保存管理・検索・広報など冊子の資料でも行われていたことが主な目的。
  • デジタルならではの利用、新しい表現、二次利用などはそのあとに続く。
→資料の公開、検索、広報などはデジタル環境だとどんなメリットが?


(2)デジタルになると・・・・? 

① 資料の探索から利用まで:これまでの場合




  1. Bという情報が含まれそうな資料を2次資料(OPACなど)から探す
  2. 資料の所蔵情報Aを携えて図書館/閲覧室/書架へ移動
  3. 資料の中から情報Bを探し出す
  4. 利用(≒閲覧、貸出、複写)する。


② 資料の探索から「利用」まで:デジタルの場合(※)




  1. Bという情報についてデジタルアーカイブで検索する。デジタルアーカイブは新たなメタデータや本文データなどを利用できれば、①OPACより多くの情報に対して検索することが可能。
  2. 検索をして目的の情報が見つかった場合、②その場から移動することなく本文情報にアクセスすることができる。
  3. ③デジタルアーカイブのデータを活用すれば形(フォーマット)を変換したり、大きさを変えたり、また音声読み上げや点字ディスプレイなど視覚以外の手段でも情報を得ることができる。
  4. また、④ほかのデジタルデータと組み合わせたり加工編集を加えることで、より利用者にとって望ましい形で情報を活用することができる。
※可能性、というだけでどのデジタルアーカイブでも全部あてはまる、というわけではありません。

③まとめ







3. 利用事例あれこれ

(1) 図書館内での利用

(a)情報源としての利用

① レファレンスの出典として

自館所蔵ありでもウェブ上の資料を記載。事例と一緒に出典も他館や利用者と共有できる。


② 検索で瞬間回答

大量の情報に対して機械による検索が可能。移動もなく、時間と手間の短縮になる。


③ 所蔵していなくても「常備」

ウェブからアクセス可能な場合、資料の存在を知っていることがそのまま資料を利用できることになる。あらかじめパスファインダーなどに記載しておくことで所蔵と同じ効果を得る。

ちょっと話がそれるが、各地の図書館で運営している郷土人物データベースなどは、可能であればそこからデジタルアーカイブへリンクを張って中身まで誘導できるようになるとよいと思う。リンクについては国立国会図書館サーチのAPIを利用すれば書名から機械的にリンク先のURLを作ることが可能であるし、そんなに手間はかからないはず。後述する近代日本人の肖像では人名を使って国立国会図書館サーチやデジタル化資料の検索結果へリンクを張っている。


④ よそのものも、「うちの資料」

よその所蔵でも、アクセスできれば「うちの資料」?地域資料は自分の地域にあるとは限らない。


⑤ ふえてないけどふえたよ!

発信館にとっては資料の掘り起こしができ、利用館にとっては低コストで資料が利用でき、利用者にとってはアクセス可能な資料を知ることができる「三方よし」な事例。 最近は新しい資料が公開になるたびに、個人レベルでもまとめ記事が見られるようになってきた。



(b) 加工・編集して提供

①ビジュアル素材の供給元として

自分の担当している展示では、ポスターや掲示物などに使えそうなビジュアル素材を編み込んだうえで資料を選定している。また、デジタルデータを利用すればパネルのような補助資料やデジタルサイネージのような宣伝資料を作成することもしやすい。


② かゆいところに手よ届け

展示にかぎらず、作成物にイラストや写真を補助的に入れたいという場合はデジタルアーカイブのデータを使うと便利。県立図書館に坂本龍馬の肖像が全くないわけがないが、利用を前提にウェブで公開されているものがあるのならそっちを使ったほうが楽、ということ。

「近代日本人の肖像」は近代日本の形成に影響のあった、政治家、官僚、軍人、実業家、学者、芸術家等約600名の肖像写真を集めた電子展示会。著名人の写真のほか、解説や著作一覧へのリンクがある。

上記の例では行われてなかったが、ウェブで肖像を利用する場合は元のページにリンクを張れば、その人物に興味を持った人が簡単に基本情報や著作(デジタルアーカイブで利用可なものも!)までたどり着くことができる。また、「肖像」からWikipediaやWeb NDL Authorities(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)VIAFまでリンクできていると世界レベルで広がりが持ててよいのでは。


③ 展示×デジタルアーカイブ

再び展示のお話。自分がやってわかったことだが、展示は思ったより準備が大変。ちょびっとの期間、館内だけで展示するだけではコストパフォーマンスが悪いのでは、という印象。もったいない。

また、展示というものの目的のうちには「資料の掘り起こし」があると思われるのだが、貴重書やよそから借りてきたものは展示が終わってしまうとアクセスが途切れることが少なくない。

展示を行なったという事実、あるいはそのリストをウェブ上に掲載するだけではなく、なるべく本物の展示に近い形で残すことができれば展示の意義はもっと増すのでは。展示をデジタルアーカイブしてコンテンツとして蓄積する、ロングテール化を図る。


④ お土産は大事です

兵庫県立美術館では、特別展の出口に端末が用意されており、観覧者は展示作品の画像をメールでお持ち帰りできるようになっている。パッケージ化された展示を解体し、拡散させることで利用者の自宅、携帯、パソコンの中、そしてブログなどの場に展示の会場が広がってゆく仕掛け。


⑤ グッズも重要です

同じくグッズ。貴重書などを使えば④同様に展示の拡大といえるが、図書館のロゴ、イメージ、メッセージを使えば図書館そのものを拡散することになる。

また、グッズといってもモノである必要はなく、パソコンの壁紙などデスクトップアクセサリーなどは作る側ももらう側もお手軽なのでは。れはっちブックカバーについても、自分で印刷してまで使う人はそう多くないと考え壁紙を作った。


⑥ イベントにも




三国志の双六セットということでついでに。錦絵のジャンルの一つに「おもちゃ絵」というのがあり、中でも「立版古」(組上絵、切組燈籠とも)という江戸時代のペーパークラフトが博物館などのワークショップで時々用いられている。図書館の資料も見るだけが、読むだけが能じゃなし、ということ。(写真は下記リンクのものを印刷して自作してみたもの)


⑦ まとめ





(2)図書館外での利用

① Yahoo!知恵袋

ためしにYahoo!知恵袋で検索した結果、数100件程度のリンクを発見した。回答欄では回答内容の根拠として、また「○○の資料を読みたい/探しています」といった質問の答えとしてリンクが張られていることが多かった。

また、回答者のコメントの中ではなく、「これは何か」「どう読むのか」と質問者の記入欄にもリンクや画像が張られていることもあった。言葉だけでは質問/回答しにくい事柄に対してはウェブを介してやり取りができるのは意味のあることだと思う。

② Wikipediaの場合(検索結果)

Wikipediaに関してもリンクの数を検索してみた。Yahoo!知恵袋よりもだいぶ多い1000~2000件弱の結果が得られたが、全体の件数から考えるとやはり「使われていなくもない」といった程度と思われる。

使われ方としては、ある個人著作、法令について項目が立てられた場合に、その著作へのリンク、肖像、著作の書影などを掲載する場合が多かった。そのほか、鉄道関係の項目が多く見られたが、発表の参加者からの指摘によるともともとWikipediaには鉄道関係の科目が多いためとのこと。


③ 地域情報の発信

各地の行政や地域の団体がウェブサイトで地域情報を発信する際に利用する場合。その地域の古写真や浮世絵、名士の肖像を利用することが多かった。地元のブランドイメージを印象付けるために不動産会社がマンションのウェブサイトに掲載する場合もあった。


④ 企業・団体のアーカイブ的な

古い企業や公的機関なども自身のアーカイブとしてデジタルアーカイブを利用。八百善は江戸時代より続く老舗の料亭。当時からいろいろなメディアに取り上げられていた。現代になってその歴史をウェブサイトで発信しているが、その中に江戸期に製作された立版古@国立国会図書館蔵を掲載。

また、公的機関に関しては国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業を意識してウェブサイトを作成する例も存在する。自身でアーカイブしきれないものに対しても、こうした事業を利用することで「ある程度」カバーすることができる。


図書館においてもウェブアーカイビングの重要性を意識し、活用しようとする取り組みや意見もちらほら。


⑤ 「教育機関」の利用

著作権法の35条1項にあてはまらない、いわゆる「教育機関」にとっての情報源として。


⑥ アプリ開発

モバイル機器などのアプリケーションに使う情報源として。


⑦ おまけ:転載の規定についての印象



最後に、デジタルアーカイブの利用規定について。デジタルデータの利用に際しては著作権法はもちろんのこと、さらにそれぞれの発信機関の利用規定も順守する必要がある。

とはいえ、デジタルアーカイブにはかならず詳細な利用規定が記載されているかというとそういうわけではない。何も記載がないところや、連絡先だけを記載しているところが多い。そのうちデジタルアーカイブの利用規定については詳しく調べてみたいが、ここでは参考程度に自分がいくつか見た印象と、いくつかの例を紹介するだけにしておく。




4. まとめ

(1)最初の疑問2つに対して

データベース/デジタルアーカイブは使われているのか?
→利用の絶対数は多いとは言えないが、着実に広がっている。より「普段使い」へ。

どのように使われているのか?使うことができるのか?
→閲覧・貸出・複写に加わる(×代わる)新しい「利用」の広がり。
→図書館はデジタル化されることで断片化・拡散・蓄積するのでは。

図書館のデジタルアーカイブ自体がまだ普及の途上ということもあり、その利用はまだまだ多いとは言えない。しかし、図書館の内外での事例を見る限りでは気軽にリンクを張ったり参照したりと日常的な利用は広まってきているように見える。

また、活用方法という点に関してはこれまでの閲覧・貸出・複写に加え、より利用者の取り回しのしやすい形での「利用」が広まっていくのではないかと思われる。図書館がデジタル化によって断片化し、拡散する。そうすることで日常のいろいろな活動の中でデジタルデータが引用されたり、リンクを張られたりと、より普段使いな図書館、デジタルアーカイブの利用が広まっていくのではないか。

(2)後で考えたこと

  • 図書館の守備範囲。「所蔵資料」と「使える資料」の区分けと責任の持ち方。
  • デジタル環境での図書館による著作物利用の制御・監視。これまで複写については図書館がチェックを行なってきたが、デジタルデータの二次利用についてはどうなるのか。
  • ウェブアーカイブの可能性と図書館での利用。
  • 図書館で作成される資料がやたら文字ばかりで見苦しい点について、資料として持ってるんだからイラストや写真を使ってもいいのではなかろうか。
  • 大学図書館の人はどんなこと考えてるんやろか。
  • おなか減った。

最後に考えたことはまた機会があればお話しできればと。