2013年2月22日金曜日

デジタルアーカイブの利用あれこれ

2013年2月22日に京都大学でお話しした内容をもとに記事を書いてみました。一部、わかりやすいように書き改めたところもありますが基本的には同じ内容です。Twitterのまとめや発表の詳細については下記をご覧いただければ。






1. はじめに

(1)自己紹介

  • 大学ではメキシコの言語・文化のあれこれを学ぶ。
  • 図書館で働いて4年目。ほぼ電子図書館関係のお仕事。


(2)考えていたこと

いろいろなデータベース・デジタルアーカイブを見聞きして:

  • ウェブサイトでの説明が不明瞭。運営者の理念、熱意のみ言及など。何が収録してあって、何のために運営しているか、どういうデータの使い方があるかなどの言及が乏しい。
  • 立ち枯れデータベース。Not foundやシステムが動かないものを散見。
  • 利用した成果や事例が見えにくく、存在価値がわかりにくい。
→データベース/デジタルアーカイブはどれだけ使われているのか?

イベント・展示の仕事の中で:

  • 運営のうえで、デジタルデータを活用できないかと頭をひねる。
  • 自分の活動に生かすためよそでの事例について情報を収集。
→どのように使われているのか?使うことができるのか?


2. デジタルアーカイブ概況

(1)既存の調査結果から

「文化・学術機関におけるデジタルアーカイブ等の運営に関する調査研究」

  • 目的:国内の文化・学術機関のデジタルアーカイブの整備・運営状況に関する基礎データを整備すること。
  • 1次調査は実施規模の調査。各種図書館、公文書館、博物館など計4,302機関を対象とし、2,076機関が回答。
  • 2次調査は実施実態の調査。1次調査の結果をもとに560機関を対象とし、431機関が回答。


② 概数的なこと(1次調査から)

  • 全体の実施率は27%(553/2076機関)
  • 機関の種類と規模による差が大きい。
  • 公開年は2000年代以降が80%で館種により差。
  • 公共・大学図書館は2006年以降が多い。


③ 「利用」に関して(公共図書館・大学図書館の結果@2次調査)

  • 複数の選択項目の中から1~3番目に重要なものひとつづつ、計3つ選択。
  • 1番目:「活動成果の普及・公開」や「収蔵品・資料の継続的保存・管理」など
  • 2番目:「データベース構築による資料の検索性の向上」や「広報活動の一環」など
  • 3番目:「新しい表現による情報提供」や「(二次利用のための)館外貸出・提供」など
  • そのほかは「(企画展等のための)短期的な展示」「自機関職員等の調査研究の資料として」「収蔵・資料スペースの縮小・効率化」など。


④ 概況まとめ

  • 公共・大学図書館ともに2000年代後半からのデジタルアーカイブ普及段階
  • 資料の公開・保存管理・検索・広報など冊子の資料でも行われていたことが主な目的。
  • デジタルならではの利用、新しい表現、二次利用などはそのあとに続く。
→資料の公開、検索、広報などはデジタル環境だとどんなメリットが?


(2)デジタルになると・・・・? 

① 資料の探索から利用まで:これまでの場合




  1. Bという情報が含まれそうな資料を2次資料(OPACなど)から探す
  2. 資料の所蔵情報Aを携えて図書館/閲覧室/書架へ移動
  3. 資料の中から情報Bを探し出す
  4. 利用(≒閲覧、貸出、複写)する。


② 資料の探索から「利用」まで:デジタルの場合(※)




  1. Bという情報についてデジタルアーカイブで検索する。デジタルアーカイブは新たなメタデータや本文データなどを利用できれば、①OPACより多くの情報に対して検索することが可能。
  2. 検索をして目的の情報が見つかった場合、②その場から移動することなく本文情報にアクセスすることができる。
  3. ③デジタルアーカイブのデータを活用すれば形(フォーマット)を変換したり、大きさを変えたり、また音声読み上げや点字ディスプレイなど視覚以外の手段でも情報を得ることができる。
  4. また、④ほかのデジタルデータと組み合わせたり加工編集を加えることで、より利用者にとって望ましい形で情報を活用することができる。
※可能性、というだけでどのデジタルアーカイブでも全部あてはまる、というわけではありません。

③まとめ







3. 利用事例あれこれ

(1) 図書館内での利用

(a)情報源としての利用

① レファレンスの出典として

自館所蔵ありでもウェブ上の資料を記載。事例と一緒に出典も他館や利用者と共有できる。


② 検索で瞬間回答

大量の情報に対して機械による検索が可能。移動もなく、時間と手間の短縮になる。


③ 所蔵していなくても「常備」

ウェブからアクセス可能な場合、資料の存在を知っていることがそのまま資料を利用できることになる。あらかじめパスファインダーなどに記載しておくことで所蔵と同じ効果を得る。

ちょっと話がそれるが、各地の図書館で運営している郷土人物データベースなどは、可能であればそこからデジタルアーカイブへリンクを張って中身まで誘導できるようになるとよいと思う。リンクについては国立国会図書館サーチのAPIを利用すれば書名から機械的にリンク先のURLを作ることが可能であるし、そんなに手間はかからないはず。後述する近代日本人の肖像では人名を使って国立国会図書館サーチやデジタル化資料の検索結果へリンクを張っている。


④ よそのものも、「うちの資料」

よその所蔵でも、アクセスできれば「うちの資料」?地域資料は自分の地域にあるとは限らない。


⑤ ふえてないけどふえたよ!

発信館にとっては資料の掘り起こしができ、利用館にとっては低コストで資料が利用でき、利用者にとってはアクセス可能な資料を知ることができる「三方よし」な事例。 最近は新しい資料が公開になるたびに、個人レベルでもまとめ記事が見られるようになってきた。



(b) 加工・編集して提供

①ビジュアル素材の供給元として

自分の担当している展示では、ポスターや掲示物などに使えそうなビジュアル素材を編み込んだうえで資料を選定している。また、デジタルデータを利用すればパネルのような補助資料やデジタルサイネージのような宣伝資料を作成することもしやすい。


② かゆいところに手よ届け

展示にかぎらず、作成物にイラストや写真を補助的に入れたいという場合はデジタルアーカイブのデータを使うと便利。県立図書館に坂本龍馬の肖像が全くないわけがないが、利用を前提にウェブで公開されているものがあるのならそっちを使ったほうが楽、ということ。

「近代日本人の肖像」は近代日本の形成に影響のあった、政治家、官僚、軍人、実業家、学者、芸術家等約600名の肖像写真を集めた電子展示会。著名人の写真のほか、解説や著作一覧へのリンクがある。

上記の例では行われてなかったが、ウェブで肖像を利用する場合は元のページにリンクを張れば、その人物に興味を持った人が簡単に基本情報や著作(デジタルアーカイブで利用可なものも!)までたどり着くことができる。また、「肖像」からWikipediaやWeb NDL Authorities(国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス)VIAFまでリンクできていると世界レベルで広がりが持ててよいのでは。


③ 展示×デジタルアーカイブ

再び展示のお話。自分がやってわかったことだが、展示は思ったより準備が大変。ちょびっとの期間、館内だけで展示するだけではコストパフォーマンスが悪いのでは、という印象。もったいない。

また、展示というものの目的のうちには「資料の掘り起こし」があると思われるのだが、貴重書やよそから借りてきたものは展示が終わってしまうとアクセスが途切れることが少なくない。

展示を行なったという事実、あるいはそのリストをウェブ上に掲載するだけではなく、なるべく本物の展示に近い形で残すことができれば展示の意義はもっと増すのでは。展示をデジタルアーカイブしてコンテンツとして蓄積する、ロングテール化を図る。


④ お土産は大事です

兵庫県立美術館では、特別展の出口に端末が用意されており、観覧者は展示作品の画像をメールでお持ち帰りできるようになっている。パッケージ化された展示を解体し、拡散させることで利用者の自宅、携帯、パソコンの中、そしてブログなどの場に展示の会場が広がってゆく仕掛け。


⑤ グッズも重要です

同じくグッズ。貴重書などを使えば④同様に展示の拡大といえるが、図書館のロゴ、イメージ、メッセージを使えば図書館そのものを拡散することになる。

また、グッズといってもモノである必要はなく、パソコンの壁紙などデスクトップアクセサリーなどは作る側ももらう側もお手軽なのでは。れはっちブックカバーについても、自分で印刷してまで使う人はそう多くないと考え壁紙を作った。


⑥ イベントにも




三国志の双六セットということでついでに。錦絵のジャンルの一つに「おもちゃ絵」というのがあり、中でも「立版古」(組上絵、切組燈籠とも)という江戸時代のペーパークラフトが博物館などのワークショップで時々用いられている。図書館の資料も見るだけが、読むだけが能じゃなし、ということ。(写真は下記リンクのものを印刷して自作してみたもの)


⑦ まとめ





(2)図書館外での利用

① Yahoo!知恵袋

ためしにYahoo!知恵袋で検索した結果、数100件程度のリンクを発見した。回答欄では回答内容の根拠として、また「○○の資料を読みたい/探しています」といった質問の答えとしてリンクが張られていることが多かった。

また、回答者のコメントの中ではなく、「これは何か」「どう読むのか」と質問者の記入欄にもリンクや画像が張られていることもあった。言葉だけでは質問/回答しにくい事柄に対してはウェブを介してやり取りができるのは意味のあることだと思う。

② Wikipediaの場合(検索結果)

Wikipediaに関してもリンクの数を検索してみた。Yahoo!知恵袋よりもだいぶ多い1000~2000件弱の結果が得られたが、全体の件数から考えるとやはり「使われていなくもない」といった程度と思われる。

使われ方としては、ある個人著作、法令について項目が立てられた場合に、その著作へのリンク、肖像、著作の書影などを掲載する場合が多かった。そのほか、鉄道関係の項目が多く見られたが、発表の参加者からの指摘によるともともとWikipediaには鉄道関係の科目が多いためとのこと。


③ 地域情報の発信

各地の行政や地域の団体がウェブサイトで地域情報を発信する際に利用する場合。その地域の古写真や浮世絵、名士の肖像を利用することが多かった。地元のブランドイメージを印象付けるために不動産会社がマンションのウェブサイトに掲載する場合もあった。


④ 企業・団体のアーカイブ的な

古い企業や公的機関なども自身のアーカイブとしてデジタルアーカイブを利用。八百善は江戸時代より続く老舗の料亭。当時からいろいろなメディアに取り上げられていた。現代になってその歴史をウェブサイトで発信しているが、その中に江戸期に製作された立版古@国立国会図書館蔵を掲載。

また、公的機関に関しては国立国会図書館のインターネット資料収集保存事業を意識してウェブサイトを作成する例も存在する。自身でアーカイブしきれないものに対しても、こうした事業を利用することで「ある程度」カバーすることができる。


図書館においてもウェブアーカイビングの重要性を意識し、活用しようとする取り組みや意見もちらほら。


⑤ 「教育機関」の利用

著作権法の35条1項にあてはまらない、いわゆる「教育機関」にとっての情報源として。


⑥ アプリ開発

モバイル機器などのアプリケーションに使う情報源として。


⑦ おまけ:転載の規定についての印象



最後に、デジタルアーカイブの利用規定について。デジタルデータの利用に際しては著作権法はもちろんのこと、さらにそれぞれの発信機関の利用規定も順守する必要がある。

とはいえ、デジタルアーカイブにはかならず詳細な利用規定が記載されているかというとそういうわけではない。何も記載がないところや、連絡先だけを記載しているところが多い。そのうちデジタルアーカイブの利用規定については詳しく調べてみたいが、ここでは参考程度に自分がいくつか見た印象と、いくつかの例を紹介するだけにしておく。




4. まとめ

(1)最初の疑問2つに対して

データベース/デジタルアーカイブは使われているのか?
→利用の絶対数は多いとは言えないが、着実に広がっている。より「普段使い」へ。

どのように使われているのか?使うことができるのか?
→閲覧・貸出・複写に加わる(×代わる)新しい「利用」の広がり。
→図書館はデジタル化されることで断片化・拡散・蓄積するのでは。

図書館のデジタルアーカイブ自体がまだ普及の途上ということもあり、その利用はまだまだ多いとは言えない。しかし、図書館の内外での事例を見る限りでは気軽にリンクを張ったり参照したりと日常的な利用は広まってきているように見える。

また、活用方法という点に関してはこれまでの閲覧・貸出・複写に加え、より利用者の取り回しのしやすい形での「利用」が広まっていくのではないかと思われる。図書館がデジタル化によって断片化し、拡散する。そうすることで日常のいろいろな活動の中でデジタルデータが引用されたり、リンクを張られたりと、より普段使いな図書館、デジタルアーカイブの利用が広まっていくのではないか。

(2)後で考えたこと

  • 図書館の守備範囲。「所蔵資料」と「使える資料」の区分けと責任の持ち方。
  • デジタル環境での図書館による著作物利用の制御・監視。これまで複写については図書館がチェックを行なってきたが、デジタルデータの二次利用についてはどうなるのか。
  • ウェブアーカイブの可能性と図書館での利用。
  • 図書館で作成される資料がやたら文字ばかりで見苦しい点について、資料として持ってるんだからイラストや写真を使ってもいいのではなかろうか。
  • 大学図書館の人はどんなこと考えてるんやろか。
  • おなか減った。

最後に考えたことはまた機会があればお話しできればと。

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